第185章 あと少し

絶体絶命の、その瞬間だった。

「チン」

軽快な電子音と共に、隣のエレベーターの扉が開く。

一条星夜は、夜も更けてきたため橘凛を夕食に連れ出そうと迎えに来ただけだった。だが、彼が目にしたのはあまりに衝撃的で、戦慄すべき光景だった。

ナイフが、今まさに橘凛の身体に突き立てられようとしている。

星夜の瞳孔が極限まで収縮し、全身から凄まじい殺気と戾気が噴き出した。

彼は獲物を狙う豹のごとく疾駆した。その速度はあまりに速く、残像すら生むほどだ。

ナイフの切っ先が凛の胸元数センチに迫った刹那――鋭利かつ非情な横蹴りが、正確に谷森利之の手首を捉えた。

「バキッ!」

生々しい骨の砕ける音が...

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